第一部 一節 息づく砂漠 |
容赦なく照り返す熱砂。どこまでも続く蒼空と白砂。 生命の息吹を容赦なく否定しているこの大砂漠のど真ん中で一人狩りをする者がいた。 「・・・・ハッ・・・・こ・ヤ・・・・とい・・・・・!・・」 ガスッ!! ひときわ大きな剣音が熱砂に響く。 「はぁはぁはぁ。。。。やろぉ、てこずらせやがって!!」 ボコッ!ボコッ!ボコッ! その者の目の前には、大蠍が2匹無残な姿で横たわっており 悪態をつきながらその亡骸を蹴り回している。 「ぁぁ。。。ギルド支給の服がぼろぼろじゃねぇーかぁ。まぁ〜た、ウォリセに小言言われちまうなぁ。・・・・勘弁してくれよ。」 ・・・・ポタ・・・・ポタ・・・ 青年は、麻のフードを日よけ用に被っている為、よく見えはしないがまだよく日焼けのした 精悍な顔つきである。どうやら身なりからして剣士らしい。 まだ、大蠍の懐には、刃の部分が反っている剣。俗にいう日本刀が突き刺さっている。 「いくら日本刀が良く斬れるからって蠍の甲羅は無謀すぎたか・・・・ぁ、刃こぼれしてやがる。」 刀を引き抜く。コポッと蠍の体液があふれる。亡骸をつたい砂に染み込んでいく。 ポタ・・・ポタ・・・・・・ポタ・・・・・・ 「さっきから何の音だ?」 青年は、見回すが辺りはなにもない砂漠が広がるだけだ。 ポタ・・・ポタ・・・・ポタ・ポタ・・・ 「なんか体が軽いなぁ。・・・・!!!!!!!!!・・あぁ!!」 腰に下げていた大型の水筒に手をやる。・・・・・軽い。 漏れていたのだろう。水はもうほとんど残っていない。 蠍との戦闘のせいか水筒はいびつに凹んでいた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何の冗談だぁぁぁぁぁぁぁぁ」 残った水を漏らす前に飲み干す。そして、数分思案顔で立ちすくむと 荷物をまとめ蠍の甲羅を剥ぎとり、西に向い始めた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 あれから三時間、青年はひたすら歩いていた。 西に向い始めた直後、剥ぎ取った甲羅を使い簡易の日よけを作ると 日が暮れるのをそこで待っていた。日中の砂漠を水もなしで歩くのは自殺行為だからである。 歩き始めたのは、小一時間前だ。すっかり日も暮れている。青年はオアシスを探している。 途中立ち寄ったオアシスだ。道も覚えていた。(道など無いが、)問題は距離と体力だった。 蠍との戦闘において神経をすりえらし体力も限りなく奪われている状態で、 半日歩いた距離を制覇するのは到底無理な話である。それでも歩くしかない。 「畜生、、、あんな馬鹿な話にのるんじゃなかった。」 「大蠍を倒してきたら2万zenyだなんて安請け合いしちまってよぉ。まさか2匹もいるとわ。。。」 うなだれて歩く。 話はこうだ。さっきもでたオアシス。そこは、小さな宿場町のようになっていて モロコ行商人やプロンテラの大棚店の商品買い付け人、 旅人やならず者によって成り立っている その酒場での話である。 最近、行商人の間で大蠍に襲われたという話が多く広まっていた。 そこで、酒場のならず者達が賞金をだせば倒して来てやるとのたまっていたのだ。 しばらくして、立て札が町の広場に打ち立てられた。 [ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄] [ ****DESTROY***** ] [ ] [ 大蠍を倒せば5000zeny ] [ ] [ モロコ行商人ギルド ] [___________] | | 多くの者達が東の砂漠へ旅立ち、帰ってこなかった。 誰かが犠牲になるたびに値が釣り上がり、また向かう者が増える。 がしかし、その内だれも東に向かうものはいなくなり、 行商人達は途方にくれていたのである。 そこへ旅の途中のこの男が、酒場に来たのである。剣士ギルドの者などここでは かなりめずらしい。当然目立つ。 その内、酒場のならず者が絡んできて・・・・まぁその後は売り言葉に買い言葉である。 かといって、無理な話でもなかった。1匹ならば・・・・ 他の者も1匹と過って出て行き、逝ったのであろうと思う。 そして今にいたるわけだ。 青年は思い出しながら苦虫をつぶしたような顔で、大蠍の甲羅を引きずりながら、 ひたすら前へ前へと。。。 ・・・ボフッ・・・・・・・・・・・・・・・・。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 二節へ続く・・・・ |